光善寺での参拝を終え、同じ生玉寺町を少し歩く。

すぐそばに位置する増福寺(ぞうふくじ)を訪ねました。

ここは大阪新四十八願所阿弥陀巡礼の第三十二番札所で、「版元の寺」「本屋の寺」として知られる歴史ある寺院です。

それでは増福寺へ参りましょう。

 

 

第三十二番札所 増福寺(浄土宗)
所在地:大阪府大阪市天王寺区生玉寺町5-24
御本尊:阿弥陀如来立像

 

 

歴史・由緒

 

慶長7年(1602)、良誉冥託大和尚によって創建された浄土宗の寺院です。

慶長7年は徳川家康が江戸幕府を開く前年にあたり、大坂が豊臣と徳川の狭間で揺れ動いていた時代に開かれました。

本堂は明和5年に焼失しましたが、安永2年に再建されました。

類焼を免れた山門は、大阪大空襲の戦災からものがれ、創建当時の姿を現在までとどめています。

400年以上の歴史を持つ山門は、今も変わらず参拝者を迎え入れています。

 

 

「版元の寺」「本屋の寺」

 

増福寺の最大の特徴は、江戸期より上方の出版界に功績のあった檀家様が多く、大阪における「版元の寺」「本屋の寺」ともいえる歴史を有しています。

大阪の出版文化を支えた人々が信仰した寺院として、文化史上でも重要な位置を占めています。

また、大坂の陣で活躍した豊臣方の武将「薄田隼人正兼相(すすきだ はやとのかみ かねすけ)」と、その親族の墓が建立されています。

薄田隼人正兼相は「岩見重太郎」の別名でも知られています。

境内には元禄14年に女人往生の願を込めて鋳造建立された逆蓮華に座られる阿弥陀如来坐像があります。

 

 

阿弥陀巡礼の四十八の願い

 

阿弥陀如来が法蔵菩薩として修行していた時、すべての人々を救うために立てられた四十八の誓願。

大阪新四十八願所巡礼は、この一つひとつの願を辿る旅です。

増福寺には第三十二願「国土厳飾の願」が配当されています。

 

 

第三十二願「国土厳飾の願(こくどごんじきのがん)」

 

【原文】
設我得佛 自地已上 至於虛空 宮殿樓觀 池流華樹 國中所有一切萬物 皆以無量雜寶 百千種香 而共合成 嚴飾奇妙 超諸天人 其香普熏十方世界 菩薩聞者 皆修佛行 若不爾者 不取正覺

 

【現代語訳】
私が仏となるとき、地上から虚空に至るまで、宮殿・楼閣・池・花・樹木など、国中のあらゆるものが、無量の様々な宝と百千種の香りで造られ、その荘厳は奇妙で天人を超え、その香りは十方世界に薫り、菩薩がこれを聞けば皆仏道を修めるようにならないならば、私は仏とならない。

 

【大意】
極楽浄土が無量の宝と百千種の香りで美しく荘厳され、その香りが十方世界に広がり、菩薩たちが仏道を修める助けとなるという誓いです。この願は、浄土が、けがれなく清らかで、この上なく美しく荘厳され、修行に適した環境であることを誓うものです。第三十一願とともに浄土の完成を願う、摂浄土願の一つです。

 

 

【御詠歌】

ふたばより にほふはやしに たちぬるる 袖もかくこそ よもの春かぜ

 

双葉の頃から香り立つ林に立ち、袖に染み込む四方からの春風。

「にほふはやし(匂う林)」という言葉が、第三十二願の「百千種香」「其香普熏十方世界」、百千種の香りが十方世界に薫るという願の意味を美しく表現しています。

浄土の荘厳された美しさと香りが、この和歌から伝わってきます。

 

 

境内の見どころ

 

類焼を免れた山門は、大阪大空襲の戦災からものがれ、創建当時の姿を現在までとどめています。

400年以上の歴史を持つ山門をくぐると、静かで温かい陽が降り注ぐ境内が広がります。

本堂

本堂

都会の中にありながら、とても気持ちのよい空間です。

 

 

元禄の阿弥陀如来坐像

 

本堂向かって左手には、元禄14年(1701年)に女人往生の願を込めて鋳造建立された逆蓮華に坐像の阿弥陀如来が安置されています。

大きな阿弥陀如来坐像は青緑色を帯びており、銅が時を経て緑青に変化した姿が歴史の重みを感じさせます。

阿弥陀如来坐像

逆蓮華の台座に座っておられる阿弥陀如来坐像

よく見ると、通常とは異なる逆蓮華の台座に座っておられます。

この逆蓮華は女性の往生を願って特別に造られた珍しい形式で、江戸時代の人々の女性への思いやりと信仰の深さを今に伝えています。

 

 

大坂の陣ゆかりの墓所

 

境内には、大坂の陣で活躍した豊臣方の武将「薄田隼人正兼相(すすきだ はやとのかみ かねすけ)」のお墓があります。

薄田隼人正兼相は「岩見重太郎」の別名でも知られています。

墓所には2基のお墓が並んでおり、もう1基は親族のものと伝えられています。

薄田隼人正兼相の墓所

薄田隼人正兼相の墓所への案内

 

 

境内には二宮金次郎の像が立っており、勤勉と学問を重んじる寺院の姿勢が窺えます。

庫裡の横にある二宮金次郎の像

庫裡の横にある二宮金次郎の像

 

 

また、鬼瓦も見どころの一つです。

境内にある鬼瓦

境内にある鬼瓦

 

 

御朱印

 

大阪新四十八願所阿弥陀巡礼の第三十二番札所としての御朱印をいただくことができます。

訪問時はお留守でしたので、再訪して御朱印をいただく予定です。

 

 

アクセス

 

【所在地】大阪府大阪市天王寺区生玉寺町5-24

【交通アクセス】Osaka Metro千日前線・谷町線「谷町九丁目」駅より徒歩約5分、近鉄奈良・大阪線「大阪上本町」駅より徒歩約10分

 

 

 

参拝メモ

 

光善寺からすぐ近くに位置し、同じ日に複数の札所を効率よく巡ることができます。

生玉寺町の寺町巡りの一つとして、静かで落ち着いた時間を過ごすことができる札所です。

増福寺公式サイト

 

 

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