大阪・浪速区の賑やかな通りを抜けると、ふっと空気が変わる瞬間があります。

そこに佇むのは、今宮戎神社のすぐ北にある小さな社——廣田神社

主祭神は天照大神の荒魂とされる撞賢木厳之御魂天疎向津媛命(つきさかきいつのみたまあまさかるむかつひめのみこと)。

そして、この神社を特別な存在にしているのは、珍しいアカエイ信仰です。

痔平癒無病息災、さらには合格祈願まで・・・。

そのご利益の由来を知れば、きっと訪れたくなるはず。

今回は、廣田神社の歴史と境内の魅力、そして心に残る静けさをご紹介します。

それでは、廣田神社へ参りましょう。

 

 

廣田神社とは

 

大阪市浪速区、日本橋西の一角にひっそりと鎮座する廣田神社は、古くから天王寺の鎮守として、また今宮村の産土神として地域を見守ってきました。

創建年代は明らかではありませんが、伝承によれば、神功皇后が三韓征伐からの帰途、難波へ上陸しようとした際に船が進まなくなり、天照大神の荒魂をこの地に祀るよう神託を受けたのが始まりとされます。

祀った途端に船が動き出したという逸話は、今も語り継がれています。

江戸時代には「廣田の杜」と呼ばれる鬱蒼とした森に囲まれ、境内は広く、紅白二種の萩を植えた茶店があり「萩の茶屋」として親しまれました。その名残は現在も町名「萩之茶屋」に残っています。

また、廣田神社はアカエイ(アカエ)を神使とする珍しい信仰で知られます。

土地・地域・地元の“地”と、痔疾の“痔”が同じ音であることから、痔平癒のご利益が広まり、さらに「エイ=叡知」に通じることから合格祈願・必勝祈願の神様としても信仰を集めてきました。

今宮戎神社の賑わいからわずか数分の距離にありながら、境内には静謐な空気が漂い、訪れる人の心をそっと整えてくれる——そんな歴史と信仰が息づく神社です。

 

廣田神社の手水舎の写真

廣田神社の手水舎|木々に囲まれた静かな場所で、心と手を清めてから参拝へ。
小さな社ながら、細部に宿る神聖さが印象的です。

 

 

ご祭神と由緒

 

廣田神社の主祭神は、撞賢木厳之御魂天疎向津姫命(つきさかきいつのみたまあまさかるむかつひめのみこと)。

これは伊勢神宮内宮の第一別宮「荒祭宮」に祀られる天照大神の荒魂と同体とされます。

荒魂は、和魂(にぎみたま)が持つ穏やかな守護とは異なり、物事を切り開き、困難を打ち破る力を象徴する側面です。

そのため、廣田神社は古くから「新しいことを始める時」「壁を乗り越えたい時」に力を授けてくれる神様として信仰されてきました。

創建の由来は、神功皇后の伝承に遡ります。

三韓征伐からの帰途、皇后が難波へ向かう途中で船が進まなくなりました。

そこに廣田の地に天照大神の荒魂を祀るようにとの神託が降りたので、皇后は天照大神の荒魂・撞賢木厳之御魂天疎向津媛命を祀ると、船が動き出したといわれています。

 

廣田神社の拝殿の写真。天照大神の荒魂を祀る神聖な場所。

廣田神社の拝殿|天照大神の荒魂を祀る神聖な場所。静けさの中に力強さが宿る空間です。

 

 

珍しいアカエイ信仰

 

廣田神社の最大の特徴は、神の使いとしてアカエイ(赤鱏)を祀っていることです。

この信仰は、古くからこの地域が海に近い漁師町だったことと深く関わっています。

アカエイは大阪では「アカエ」と呼ばれ、かつては食用や薬用として珍重されていました。

しかし、その尾には鋭いトゲがあり、刺されると激しい痛みと傷の悪化を招くため、漁師は捕らえるとすぐに尾を切り落としました。

この「尾を断つ」という行為が、「断つ=断食」と結びつき、断食して祈願すれば難病も治るという信仰が生まれたといわれます。

さらに、「地(じ)」と「痔(じ)」の語呂合わせから痔疾平癒のご利益が広まりました。

舟底の冷えや長時間の作業で痔に悩む漁師が多かったことも、この信仰を強めた理由のひとつです。

やがて「エイ=叡知」に通じるとして、合格祈願・必勝祈願の神様としても知られるようになり、現在では受験生や挑戦を控えた人々も訪れます。

拝殿には大きなアカエイの絵馬が奉納され、訪れる人の目を引きます。

庶民の暮らしと祈りが生んだこのユニークな信仰は、今も浪速の町で静かに息づいています。

 

廣田神社では、アカエイの絵馬を奉納することで、痔平癒や合格祈願などのご利益を願います。

そのユニークな形と色合いが、境内の静けさの中でひときわ目を引きます。

廣田神社のアカエイ絵馬。痔平癒、合格祈願への祈りが重なります。

廣田神社のアカエイ絵馬|痔平癒や合格祈願のご利益で知られる、ユニークで愛らしい絵馬。境内の一角に静かに並んでいます。

 

 

境内のみどころ|静けさの中に宿る祈りの場所たち

 

廣田神社の境内には、拝殿のほかにも静かに祈りが息づく場所が点在しています。
参拝の合間にそっと立ち寄ることで、心がふっとほどけるような感覚に包まれます。

 

赤土稲荷神社(廣田神社の末社)

 

朱色の鳥居が並ぶ小さな稲荷社。

赤土稲荷神社は、廣田神社の末社として祀られており、五穀豊穣や商売繁盛のご利益があるとされています。

境内の奥にひっそりと佇む姿は、まるで日常の喧騒から離れた異空間のよう。

朱色の鳥居が並ぶ廣田神社の赤土稲荷神社

赤土稲荷神社|朱色の鳥居が並ぶ静かな祈りの場所。廣田神社の境内奥にひっそりと佇んでいます。

 

祖霊社

 

祖霊社は、地域の方々のご先祖を祀るための社で、廣田神社の静けさを象徴する場所のひとつ。

木々に囲まれた空間に、祈りの気配が静かに漂っています。

訪れると、時間がゆっくりと流れているような感覚になります。

廣田神社の境内に佇む祖霊社

祖霊社|木々に囲まれた静かな社。ご先祖への祈りが、そっと息づいています。

 

 

スポンサーリンク




 

 

御朱印|六十六花御朱印巡りでいただいた一枚

 

廣田神社では、通常の御朱印に加えて、「Osaka Metroで行く六十六花御朱印巡り」の期間中、特別な花御朱印をいただくことができます。

花御朱印に押されたアカエイのスタンプは、神社の静けさと調和するようでとても印象的。

御朱印帳にそっと挟んだ瞬間、旅の記憶がやさしく彩られるようでした。

廣田神社で拝受したOsakaMetro六十六社巡りの花御朱印

廣田神社の花御朱印|「Osaka Metroで行く六十六花御朱印巡り(大阪)」の一枚。やさしい色合いが心を癒してくれます。

 

廣田神社の花御朱印は、「Osaka Metroで行く六十六花御朱印巡り(大阪)」の企画でいただいたものです。

この巡礼では、大阪市内の66社それぞれに御朱印が用意されており、旅の記憶を彩る一枚に出会えます。

他の神社の詳細や御朱印については、こちらのまとめ記事で詳しくご紹介しています。

 

 

アクセス|廣田神社への行き方

 

【所在地】大阪府大阪市浪速区日本橋西2丁目4-14

【駐車場】なし。(専用駐車場はありませんが、周辺にはコインパーキングが複数あります。)

【交通アクセス】・南海高野線「今宮戎駅」から徒歩約4分・大阪メトロ堺筋線「恵美須町駅」から徒歩約7分・JR「新今宮駅」から徒歩約10分。

 

 

 

周辺スポット|廣田神社と合わせて巡りたい浪速の名所

 

廣田神社の周辺には、大阪らしい賑わいと歴史が感じられるスポットが点在しています。

参拝の前後に少し足を伸ばして、心と体をゆるめる時間を過ごしてみませんか?

🏮今宮戎神社(徒歩約2分)

「商売繁盛で笹持ってこい!」で知られる十日戎の舞台。
廣田神社のすぐ南にあり、賑やかな雰囲気と対照的な静けさを感じることができます。
両社を合わせて参拝することで、浄化と繁栄のバランスを整える旅に。

👉 今宮戎神社の歴史や境内の様子については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
大阪・今宮戎神社|十日戎と商売繁盛の神様に出会う

 

🗼通天閣・新世界(徒歩約10分)

大阪のシンボル・通天閣を中心に、昭和レトロな雰囲気が漂う新世界エリア。
串カツ店や射的屋、レトロ喫茶など、懐かしさと活気が混ざり合う空間です。
参拝後に少し賑やかな空気に触れることで、心の余白が広がります。

 

🌸天王寺公園・てんしば(徒歩約15分)

緑豊かな公園とカフェ、芝生広場が広がる癒しのスポット。
季節の花々やベンチでのんびり過ごす時間は、神社巡りの余韻を優しく包み込んでくれます。

 

🛍️日本橋電気街・オタロード(徒歩約7分)

アニメ・ゲーム・フィギュアなどのカルチャーが集まるエリア。
廣田神社の静けさとのギャップが面白く、大阪の多面性を感じられる寄り道に。

 

 

記事の締めくくり|静けさに包まれる祈りの時間を

 

廣田神社は、日本橋の賑わいからほんの少し離れた場所にありながら、まるで別世界のような静けさが広がる神社でした。

アカエイ信仰や花御朱印、赤土稲荷や祖霊社など、境内のひとつひとつに祈りの気配が宿っていて、訪れるたびに心がすっと整っていくのを感じます。

花御朱印を通して、自分自身と向き合う時間を持てる神社でもありました。

 

廣田神社のすぐ南にある「今宮戎神社」もご紹介しています。
👉 今宮戎神社|十日戎と商売繁盛の神様に出会う

 

花御朱印を通して、心に残る祈りの旅を。
👉 大阪メトロで行く花御朱印巡りまとめ