大阪市平野区喜連。
住宅街の一角に、ひっそりと佇む如願寺(にょがんじ)があります。
楯原神社から如願寺へと続く南門をくぐった瞬間、お寺のやわらかな空気に包まれました。
聖徳太子が創建し、弘法大師が再興したと伝えられるこの寺には、長い祈りの記憶が息づいています。
「ぽっくり寺」として親しまれ、安らかな旅立ちを願う人々の想いが、境内の静けさに溶け込んでいるようでした。
季節の花が咲く庭園、鯱鉾をいただく本堂、そして本堂にそっと手を合わせる人々──。
その一つひとつが、忙しさの中で立ち止まりたい心に、やさしく寄り添ってくれるようでした。
それでは、如願寺へと参りましょう。
目次
歴史と由緒|聖徳太子と弘法大師の祈りが重なる場所
如願寺の創建は、崇峻元年(西暦588年)──聖徳太子がこの地に「喜連寺(きれでら)」を建立したことに始まると伝えられています。
その後、弘仁8年(817年)には弘法大師が再興し、寺の名を「如願寺」と改めたとされます。
大師が杖を立てて願をかけたという伝承も残り、寺名には「願いが叶うように」という祈りが込められているようです。
本尊は、平安時代作の聖観世音菩薩。
大阪府の有形文化財にも指定されており、長い年月を経てもなお、静かに人々の願いに寄り添い続けています。
如願寺はまた、摂津国三十三ヶ所霊場の第32番札所、摂津国八十八箇所霊場の第37番札所としても知られ、巡礼の地として多くの人々が足を運んできました。
その祈りの記憶は、境内の静けさの中に今も息づいています。
ご利益と祈願|願いに静かに寄り添う仏さま
如願寺では、「安心の終末を願う方の守護の仏様」として大随求菩薩尊(だいずいぐぼさつそん)が祀られているようです。
公式サイトによれば、「七七月(ななつき)参り」という縁日に、安楽往生や無病息災を願う祈願が行われているとのこと。
だから、「ぽっくり寺」とも呼ばれているのですね。
弘法大師が再興したお寺らしく、終末の安らぎを願う祈りが今も静かに息づいています。
境内に特定の祈願所は見当たりませんでしたが、本堂の前に立つと、言葉にしきれない想いがそっと整えられていくような、そんな静けさがありました。
願いを声に出すよりも、ただ手を合わせて祈る──。
そのひとときが、この寺にはよく似合っているのかもしれません。
境内の見どころ|静かな祈りの風景
楯原神社と繋がっている南門から入ったので、手水はどこ?っとキョロキョロ。。
手水は東門の所にありました。清らかな水に浮かべられた花にお寺のお心遣いを感じます。手を清めるその所作さえも、祈りの始まりのように感じられました。
清らかな水で手を清めると、心のざわめきが静かにほどけていく──祈りの始まりは、手を清めることから。
正面に構えるのは、鯱鉾をいただく本堂。
享保元年(1716年)に再建されたと伝えられ、堂々とした佇まいの中にも、やさしい気配が漂っています。
本尊の聖観世音菩薩は平安時代作で、大阪府の有形文化財にも指定されています。
鯱鉾をいただく本堂は、時を超えて祈りを受け止めてきた場所。静けさの中に、誰かの願いが今も息づいている。
静かに佇む弥勒堂。
未来仏・弥勒菩薩に祈りを捧げる場として、時の流れを超えたやすらぎを感じさせてくれます。
未来を照らす弥勒のまなざし。まだ見ぬ安らぎに手を合わせる午後の光。
境内の一角には、地蔵菩薩が静かに佇んでいます。
風雨にさらされながらも、やさしいまなざしをたたえ、訪れる人の願いを受け止めてくれるようでした。
その姿は、祈りの場に寄り添う存在として、境内の空気をさらにやわらかくしてくれます。
静かに佇む地蔵菩薩。風に揺れる葉の音とともに、祈りの気配が満ちていました。
本堂の横には、寺務所を兼ねた庫裡があり、そっと境内を見守っているようでした。
人の気配が静かに見守る寺務所と庫裡。祈りの場を支える、やさしい日常の気配。
訪れた日は静かで、まるで寺全体が深呼吸しているような空気に包まれていました。
そして、境内の一角には庭園が広がり、季節の花々がやさしく咲いていました。花の色や葉の揺れが、祈りの余韻をそっと彩ってくれるようです。
季節の花がそっと咲く庭園。風に揺れる葉の音が、心の奥にやさしく届く。
御朱印|六十六花御朱印巡り
如願寺では、摂津国三十三ヶ所霊場第32番札所、および摂津国八十八箇所霊場第37番札所としての御朱印がいただけます。
また、OsakaMetroが企画する「六十六花御朱印巡り」にも参加しており、季節の花をあしらったやさしい花御朱印が人気を集めています。
今回いただいたのは、OsakaMetroが企画する「六十六花御朱印巡り」の一枚。
ヒガンバナが咲く季節に訪れた如願寺で、祈りの記憶と花の彩りが重なるような御朱印をいただきました。
その一枚は、旅の余韻として、静かに心に残っています。
願いをそっと手元に残す花御朱印。赤く咲くヒガンバナが、祈りの余韻を静かに彩ってくれました。
👉 「OsakaMetroで行く六十六花御朱印巡り」まとめ記事はこちら
ロシアから来た副住職
如願寺には、少し意外な副住職さんがいらっしゃいます。
副住職の慈真(じしん)さんは、ロシア・ウラジオストク出身の真言宗僧侶。
日本語・英語・ロシア語に堪能で、外国人旅行者にもやさしく仏教の世界を案内されています。
来日後は京都・仁和寺で修行を積み、僧籍を取得。
その後、如願寺で副住職として活動しながら、茶道・写経・陶芸などの文化体験を企画し、祈りの場を国境を越えてひらいています。
冬の寒さの中、東京から高野山まで徒歩で巡礼し、さらに四国八十八ヶ所をわずか40日で巡ったというエピソードも。
そのストイックな精神は、空海への深い帰依と、祈りへの真摯な姿勢を感じさせてくれます。
静かな境内に、国際的な祈りの気配がそっと息づいている──。
如願寺のもうひとつの顔として、慈真さんの存在は、現代の祈りのかたちをやさしく映し出しているようでした。
アクセス
【所在地】大阪市平野区喜連6-1-38
【札所等】摂津国三十三ヶ所第32番札所、摂津国八十八箇所第37番札所
【駐車場】あり(5台可)
【最寄り駅】大阪メトロ谷町線「喜連瓜破駅」③番出口から徒歩約10分
祈りの記憶を胸に
大阪市平野区喜連に佇む如願寺は、聖徳太子と弘法大師の祈りが重なる、静かな古寺。
境内には華やかさはなくとも、手水の音、本堂の影、庭園の花──その一つひとつが、心を整えてくれるようでした。
「ぽっくり寺」として紹介されることもありますが、祈りの場に特別な装飾はなく、ただ静かに手を合わせる時間が流れていました。
ご住職さんから、喜連の町の歴史も伺うことができ、とても素敵な時間を過ごすことができました。
拝受した花御朱印には彼岸花の彩りがあり、境内にはヒガンバナが咲いていて、祈りの彩りがそっと重なったようでとてもうれしい気持ちになりました。
忙しさの中で、ふと立ち止まりたくなったとき。
願いを言葉にするより、静けさに身をゆだねたいとき。
如願寺は、そんな心にそっと寄り添ってくれる素敵な場所です。
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